平簡易裁判所 昭和30年(ハ)7号 判決 1956年5月23日
原告 丹野勝美
被告 岡部武義 外一名
主文
被告らは原告に対し各自金四万九千四百二十円を支払うべし。
訴訟費用は被告らの連帯負担とする。
事実
原告訴訟代理人は主文第一項同旨及び訴訟費用は被告らの負担とするとの判決を求め、その請求原因として
原告は大工職、被告株式会社平タクシー(以下単に被告会社という。)は乗合自動車の営業者、被告岡部は被告会社に雇われ自動車運転の業に従事しているものであるが、原告は昭和二十九年十月十一日午後九時三十分頃平市駅前大通(俗称三十米道路)三幸デパート前西側歩道から同大通を横断しようとして車道に踏み出した途端、本町通を東進し来り左折して平駅方向に進行し来つた被告岡部運転の乗用車が原告に激突し原告はその場に顛倒したが、このため原告は左脛骨々折及び頭部裂創の重傷を負い、その結果原告は翌十二日から同年十一月二十一日まで平市内大河内医院に入院治療を受け、同医院を退院後は昭和三十年一月十五日まで通院して治療を受け、この入院及び通院の医療費として金一万二千四百二十円を要した外、予後の湯治費用として金千四百円を支出した。原告はその間百十六日間休業の止むなきに至つたが、当時原告は大工として一日少くとも金四百五十円の賃金を得ることができた筈であるからこの百十六日分計金五万二千二百円を原告が喪失した得べかりし利益として計上する。更に原告は右受傷により多大の精神的苦痛を蒙りこれは金銭を以ては容易に慰藉されないものではあるが、仮りにこれを金銭に見積れば金三万円を以て相当とする。以上合計金九万六千二十円が原告が被告岡部の不法行為によつて受けた物質的精神的損害であるから同被告に対し右金額の内金四万九千四百二十円の支払を求めると共に、被告会社は被告岡部をその経営に係る自動車運送事業に使用するものであるから、被告岡部が被告会社のため自動車を運転中原告に加えた前記損害を賠償する義務ありというべく、被告会社に対しても右同額の支払を求める、
と述べた。(立証省略)
被告岡部は本件口頭弁論期日に出頭せず、答弁書その他の準備書面も提出しない。被告会社訴訟代理人は原告の請求を棄却するとの判決を求め、答弁として原告主張事実中損害額は争うがその他は認めると述べた。(立証省略)
理由
被告岡部は原告主張事実を全部自白したものとみなされるところ右事実によれば原告の請求は理由があるから、同被告は原告に対し原告請求金額支払の義務がある。
被告会社は損害額を争つているけれども(原告が入院及び通院治療の経費として金一万二千四百二十円を支出したことは争がない)証人村上繁の証言及び原告本人尋問の結果並びに弁論の全趣旨を綜合すれば原告主張の損害額を認定するに足りる。よつて被告会社も原告に対し原告請求金額の支払をなすべき義務がある。
そして被告岡部と被告会社が被用者と使用者の関係にあることは争のない事実であるから、被告らは原告に対し各自原告請求金額支払の義務あるものである。
よつて原告の請求を認容し、訴訟費用の負担につき民事訴訟法第八十九条第九十三条を適用して主文のとおり判決する。
(裁判官 村上守次)